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ラビリンス

 アフタヌーンティーという、チェーンの喫茶店があります。大学時代に大丸神戸店の中にあるこのお店によく行きました。
 甘いもの、サンドイッチやパスタ、何でも美味しいです。ただ、値段は高めです。
 けれど、至福の時を過ごせます。
 ちなみに大阪のグランフロントにもアフタヌーンティーがあるのを私は知っていました。以前用事があり、外出した際、少し時間があったため、一人で行こうとしたんです。が、入り口がわからず、私は入れませんでした。グランフロントの案内板を見たり、スマホで地図を見たりもしたんです。が、入り口がどこなのか、さっぱりわかりませんでした。
 一人、見上げたアフタヌーンティーには、確かに人が居る気配がありました。普通に明かりがついていました。だから、どこかから、絶対に中に入れるはずなんです。
 しかし、私は入り口を見つけられませんでした。
 「忍者屋敷のような隠し扉になっているのかも」とか、「入る資格のある者だけに入り口が見えるのかも」とか考えながら、結局、諦めました。
 あと、リンクス梅田のスターバックスを外から見たんですが、このお店の入り口も、私には見つけられないんじゃないかなぁと思いました。大きな建物と少しだけ切り離された、別棟みたいな部分がスターバックスなんですよ。
 ちなみにその日、私はリンクス梅田のユニクロにさえ、辿り着けませんでした。
 最近、わかりにくい構造の建物が流行っているんでしょうか。
 よく迷子になる私にはハードルが高いです。しかも、大人なんで、私を探してくれる保護者はいません。自力で建物から脱出できず、店員さんに、半泣きで出口を聞いたことも多々あります。
 神戸の建物や地下街はわかりやすいです。が、梅田は、まるでラビリンスですね。

インターネット

 みなさんは、ネットで何を御覧になっているんでしょうか。というか、巷で噂になっているYouTuberの大食い動画とか、みなさん、本当に御覧になっているんでしょうか。
 私の周りで「観ている」という人が皆無なため、そのあたりが謎です。
 ちなみに私は、行ったことのある焼き肉屋のメニューを焼き肉屋のホームページで読むのが好きです。食べ放題のあぶりやから新地の高級店まで、チェックしています。今は休業中のお店が多いですが、焼き肉の画像を見て和んでいます。
 それにしても、食べ放題のあぶりや。案外量を食べられず、毎回残念です。毎回、食べ放題じゃなく、単品で頼むかどうか悩むんですが、「メッチヤ食べたらどうしよう」と不安になり、結局食べ放題にしてしまいます。が、私はデザートを頼まない人間なので、1品デザートがついてくる食べ放題にすると、損をしていますね。ネットで料金を比較して、冷静に分析し、気づきました。
 いつも焼肉を食べる気満々であぶりやに乗り込むのですが、私は絶対にすぐ、脱線します。つまり、焼肉じゃない、サラダとかハンバーグとか、シチューとかを食べてしまうんですよね。で、1回脱線すると、もう焼肉という名のレールには戻る気がしません。焼き肉を食べに来たにも関わらず、内心「たかが肉」などと思ってしまっている時さえあります。あの心境の変化は何なのか自分でも謎です。
 他のテーブルを覗くと、みなさんある程度焼き肉を食べ、それからデザートを挟み、また焼き肉に戻っていました。
 他人のテーブルを覗く私。
 YouTubeを観るより、ライブ感満載です。

『逃亡者』

 『逃亡者』は2020年4月中旬に発売された中村文則さんの新刊です。
 ヘビーな内容でした。
 最初にBという恐ろしい人物が出てきてビビりました。が、途中のノンフィクションらしき部分の拷問が壮絶すぎたため、終盤、再びBが登場した際にはBに恐ろしさを感じなくなってしまっていました。
 むしろ、Bは可愛いというか。
 選択肢を提示してくれるだけマシというか、
 あと、主人公の彼女の名前が、志村けんさんを思い出させるため、困りました。
 また、私は登場人物の誰にも感情移入することが出来ませんでした。拷問されている側やBに脅される主人公に感情移入するとしんどいため、できるだけ脅す側であるBに感情移入しようと試み続けましたが、無理でした。
 そして、ふと、Bもどこかの組織の下っ端で、ボスの指示で主人公を脅す役目をさせられてるんだろうなぁと思いました。
 あとカンチ。
 カンチを主人公にした形でこの話を読みたかったと最後に思いました。
 すごくドロドロした話になる気がしますが。
 また、主人公が最初あんなに執着していたトランペットを、最後に簡単に他人に…という場面に私は納得できませんでした。そもそも私なら、最初に知人からトランペットを渡されそうになっても、受け取らないと思います。走って逃げます。が、そうすると物語になりませんね。
 あと、過去の物語の中で拷問シーンが続くため、現代の場面での、拷問シーンなしの死を、軽く感じてしまいました。過去のノンフィクションらしき部分の描写が重すぎ、現代で起こる出来事が大したことのない状況に見えてしまったのが、残念です。
 そして、主人公の元彼女。この人は、私の苦手なタイプの女性です。無理矢理悲劇の主人公になろうとする、その思考回路が苦手です。が、このタイプの女性はいつだって、物語を盛り上げてくれます。そういう意味では、ナイスアシストですね。

河合隼雄氏と『人間交差点』

 昔、河合隼雄さんの本を読んだときに、「私はお金持ちで、なんでも自分の思い通りになってしまい、人生がつまらないから、死のうと思うんですよ」と言ったクライアントの中年男性を河合隼雄さんが叱ったというのを知り、私は、「なんで?」と疑問に思ったことがあります。詳しい記述がなく、それだけだったので、実際はなにか叱る要因があったのかもしれませんが。
 私からすると、この男性の「つまらない」という気持ちは、何となく想像できます。だから、「怒らなくても」と思ってしまいました。要するに、情熱を傾けられるものがない状態ということですよね。普通は、お金儲けをしないと食べていけなかったり、社員を養えなかったりするから必死に働くんですが、腐るほどお金はある。しかも、自分に迷惑をかけてくるような厄介な存在もいない。
 つまり、自分の存在意義を感じられない。
 昔、『人間交差点』という漫画で読んだ話を思い出しました。ある男性が事業に失敗し、義父に金を借りては返しという生活をしていたのですが、義父が死ぬ前に、男性は事業に成功し、義父に金を借りなくても良くなった。にもかかわらず、奥さんから「お義父さん、お金を貸してください」と父に頼んでくれと言われる。不思議に思いながら、男性は義父にそう告げる。すると、嬉しそうな笑みを浮かべ、義父は亡くなった。という内容だったのですが、人間は、自分を頼ってくれる人が居るということで、存在意義を感じ、それにより支えられている場合もあるのですよね。だから、冒頭の男性の孤独は、なんとなくですが、わかります。
 人が生きるのは、大変ですね。


母のクレープ屋

 前回の続きです。
 母のクレープ屋の開店初日。
 私と弟は、行き先がわからないまま、いきなり父に車に乗せられ、クレープ屋に連れて行かれました。「お母さんがクレープ屋、開業したんや。わしは反対したんやけど」とのこと。
 店で働く母を遠目で見ながら、父は「お母さんが、どうしてもやりたい言うて、わしの言うことを聞かんから、とりあえず店やらしたんや。けど、そのうちやめたなるやろ」と言い、停めた車の横で、煙草を吸い始めました。
 煙の向こうの、信じられない光景を見ながら、私は言葉も出せないぐらいの衝撃を受けました。母の店の前には、おそらく父が経営している会社関係の方々からいただいた開業を祝う花輪が幾つも飾られ、お客様が沢山並んでいらっしゃいました。開店初日なので、通常価格よりも安く買うことが出来るため、沢山の方々が買いに来られていました。
 「あれな、内装、100万もかかったんや。アホらしいわ」
 父は煙草をアスファルトに叩きつけ、靴底でそれを踏みつけました。父に踏み潰された煙草は、私には、母の強い意志に踏み潰された父自身のように見えました。
 「行こか。アイス食べたらええ」
 父に連れられ、私たち兄弟は母の店に入り、アイスクリームを食べました。
 正直、目の前の現実を現実と思いたくない私が居ました。
 平日は朝から夕方まで父の会社で働き、夕方から閉店の22時頃までクレープ屋、土日は1日中、クレープ屋という生活を、母は3年間続けました。
 当然家事はおろそかになり、というか、母は家事をやりたくないから仕事を優先していた節があり、家族はみな、困っていました。
 ちなみに父の会社は儲かっていたため、母が副業をする必要は、全くありませんでした。
 そして、父の「この店、トントンやったら、意味ないやろ。もう、納得したやろ。やめようや」という発言により、店を閉めることになりました。
 が、母は納得などしていないと私は感じていました。短大の家政科を出た母にとって、飲食店を出すのは夢だったはずだからです。しかし、父は強引に店を閉めました。
 それにしても、収支トントンだったというのが、私には意外でした。完全なる赤字だと思っていたので。
 閉店を決めた後、父はクレープ屋の従業員の方たちを高級な鰻屋に招待し、嬉しそうでした。従業員の方々も、すでに次の仕事が決まっており、みなさん笑顔でした。
 終始、明るい雰囲気の宴席でした。
 暗く、薄く。
 笑みを浮かべた、母一人を除いては。 
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プロフィール

●ミネルバネオ代表 石橋武
【経歴】
1974年/立命館大学経営学部を卒業し、㈱大阪読売広告社に入社
1994年/現代文講師出口汪氏と大学受験予備校S.P.Sを立ち上げるべく、㈱大阪読売広告社を退社。㈱ミネルバ代表取締役として、大阪、後に東京で大学受験予備校S.P.Sを経営。
2002年/大阪のS.P.Sにて、出口氏が開発した教材「論理エンジン」を使用した個人のお客様向け添削業務や国語特訓塾、学校様・塾様向けの「論理エンジン」販売や指導方法のレクチャーを開始。
2007年5月/㈱水王舎代表取締役に就任し、「論理エンジン」営業のみならず、書籍の企画・販売にも携わる。
2011年2月、㈱水王舎代表代表取締役を退任。
2011年8月/ミネルバネオを設立
趣味は読書、映画鑑賞。MC中心のお笑いオヤジバンドの一員でもある。

●共同執筆者(ペンネーム:モシャ)プロフィール
甲南大学を卒業しました。
ミネルバネオで働いています。
30代半ばを過ぎてしまいました。
よく聴く音楽はプリンス、レディオヘッド、シールなどです。
親戚は人間国宝(陶芸)です。ちなみに私の父方の祖父も陶芸家でした。

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