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石橋 武の「多読乱読、言いたい放題!」015

 私が今まで読んだ本のうち、印象に残った本を紹介しています。

● 伊坂幸太郎『あるキング』
 2009年作品。
 この作品は、途轍も無く面白い。今まで伊坂作品(文庫)をほとんど読んでいるが、面白さではピカイチだ。一人の天才野球選手の在りようが、周囲の視点から語られる。それは三人称であったり、二人称であったり、一人称であったりするのだが、それらが山田王求(おうく)という不世出の青年を立体的に浮き彫りにする。ただ、現実の人間だけが、彼を語るのではない。二人称では幽体となった仙醍キングスの元監督が、彼の言動を客観的に語ったりする。又、シェークスピアの「マクベス」が通奏低音としてこの物語に不可思議な色彩を与えている。3人の魔女の呪文のような言葉が効果的だ。
 選ばれしものは幸福か?
 「Fair is foul, and foul is fair」、冒頭から最後まで続く通奏低音は、この言葉に代表される。輪廻転生で始まった物語は、主人公(=王)が刺殺されるというマクベスをなぞりながら、再び輪廻転生で幕を閉じる。そして、読了後、ハッと気づく。
 主人公の山田王求は、この与えられた状況をどう思っていたのだろう?
 浮き彫りにされたのは、彼の相対化された立ち位置であって、絶対的な彼自身ではなかった。そして思った。この作品には、主人公がいながら、主人公がいない。いないはいる、いるはいない……。

★モシャの呟き
 上記に「幽体となった仙醍キングスの元監督が、彼の言動を客観的に語ったりする」とありますが、仙醍キングスの元監督が山田王求の背後に憑いてたら、怖いですね。食事もお風呂も、幽体となった仙醍キングスの元監督と一緒……いわゆるひとつの新手の苦行ですかね。
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プロフィール

●ミネルバネオ代表 石橋武
【経歴】
1974年/立命館大学経営学部を卒業し、㈱大阪読売広告社に入社
1994年/現代文講師出口汪氏と大学受験予備校S.P.Sを立ち上げるべく、㈱大阪読売広告社を退社。㈱ミネルバ代表取締役として、大阪、後に東京で大学受験予備校S.P.Sを経営。
2002年/大阪のS.P.Sにて、出口氏が開発した教材「論理エンジン」を使用した個人のお客様向け添削業務や国語特訓塾、学校様・塾様向けの「論理エンジン」販売や指導方法のレクチャーを開始。
2007年5月/㈱水王舎代表取締役に就任し、「論理エンジン」営業のみならず、書籍の企画・販売にも携わる。
2011年2月、㈱水王舎代表代表取締役を退任。
2011年8月/ミネルバネオを設立
趣味は読書、映画鑑賞。MC中心のお笑いオヤジバンドの一員でもある。

●共同執筆者(ペンネーム:モシャ)プロフィール
甲南大学を卒業しました。
ミネルバネオで働いています。
30代半ばを過ぎてしまいました。
よく聴く音楽はプリンス、レディオヘッド、シールなどです。
親戚は人間国宝(陶芸)です。ちなみに私の父方の祖父も陶芸家でした。

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