石橋 武の「多読乱読、言いたい放題!」020
私が今まで読んだ本のうち、印象に残った本を紹介しています。
● 丸谷才一『女ざかり』
1993年単行本、1996年文庫一刷、そして、私が読んだのは2010年の二刷。
随分時間がたっての二刷には訳が有る。聞くところによると、筒井康隆氏の強力なプッシュがあったというのだ。なるほど、筒井氏が好みそうな小説だ。旧仮名遣いで、レトロな雰囲気を確信犯的に纏ったスタイル。とてもシンプルなストーリー。
新日報という準大手新聞社の論説委員室。そこに配属された女主人公、南弓子。彼女が書いた堕胎擁護の社説が静かな波紋を呼ぶ。突然、彼女に職場異動の話が持ち上がる。伝手を辿って情報を集めると、どうやら裏に、ある宗教団体の圧力があり、政府は新社屋建設用地の等価交換を餌に、彼女の配置転換を画策したらしい。納得できない彼女の逆襲が始まる。
このストーリーの根幹にあるのは何だろう?
物語中に「交換理論」についての会話がある。「交換理論」というのは、一言で言えば、社会活動の原理はGive&Takeで成り立っている、ということらしい。ストーリーに照らし合わせれば、新聞社は主人公を配置転換させる(=Give)、替わりに新社屋の代替地を政府からゲットする(=Take)、圧力を掛けた宗教団体は、それにより教義が守られる(=Take)、見返りとして政府与党に対する票の取り纏めをする(=Give)、政府は、新聞社に圧力をかける(=Give)、その見返りとして宗教団体の組織票を手に入れられる(=Take)、とぐるぐるとGive&Takeが連環する。登場人物が何らかの形で、常にそういうGive&Takeの連環の一端を担う。
人間の営為や森羅万象の総てが、このGive&Take、つまり相対的連環で成り立っている、と筆者はいいたかったのか?
ともあれ、随所で展開されるペダンチックな雑学(?)も、厭味が無く、大変興味深く、かつ面白く読めた。知的好奇心が横溢した作品だった。
★モシャの呟き
ギブアンドテイク、ですか。
大学時代、某教授が「絶対に無料カウンセリングを請け負うな」とおっしゃっていたのを思い出しました。「たとえ100円でも、対価を払ってもらいなさい。でないと、カウンセラーの心に『無料でこんなに良くしてやったのに』という気持ちが生まれて、良くない」そうです。
実用的じゃないアドバイスで、すみません。
● 丸谷才一『女ざかり』
1993年単行本、1996年文庫一刷、そして、私が読んだのは2010年の二刷。
随分時間がたっての二刷には訳が有る。聞くところによると、筒井康隆氏の強力なプッシュがあったというのだ。なるほど、筒井氏が好みそうな小説だ。旧仮名遣いで、レトロな雰囲気を確信犯的に纏ったスタイル。とてもシンプルなストーリー。
新日報という準大手新聞社の論説委員室。そこに配属された女主人公、南弓子。彼女が書いた堕胎擁護の社説が静かな波紋を呼ぶ。突然、彼女に職場異動の話が持ち上がる。伝手を辿って情報を集めると、どうやら裏に、ある宗教団体の圧力があり、政府は新社屋建設用地の等価交換を餌に、彼女の配置転換を画策したらしい。納得できない彼女の逆襲が始まる。
このストーリーの根幹にあるのは何だろう?
物語中に「交換理論」についての会話がある。「交換理論」というのは、一言で言えば、社会活動の原理はGive&Takeで成り立っている、ということらしい。ストーリーに照らし合わせれば、新聞社は主人公を配置転換させる(=Give)、替わりに新社屋の代替地を政府からゲットする(=Take)、圧力を掛けた宗教団体は、それにより教義が守られる(=Take)、見返りとして政府与党に対する票の取り纏めをする(=Give)、政府は、新聞社に圧力をかける(=Give)、その見返りとして宗教団体の組織票を手に入れられる(=Take)、とぐるぐるとGive&Takeが連環する。登場人物が何らかの形で、常にそういうGive&Takeの連環の一端を担う。
人間の営為や森羅万象の総てが、このGive&Take、つまり相対的連環で成り立っている、と筆者はいいたかったのか?
ともあれ、随所で展開されるペダンチックな雑学(?)も、厭味が無く、大変興味深く、かつ面白く読めた。知的好奇心が横溢した作品だった。
★モシャの呟き
ギブアンドテイク、ですか。
大学時代、某教授が「絶対に無料カウンセリングを請け負うな」とおっしゃっていたのを思い出しました。「たとえ100円でも、対価を払ってもらいなさい。でないと、カウンセラーの心に『無料でこんなに良くしてやったのに』という気持ちが生まれて、良くない」そうです。
実用的じゃないアドバイスで、すみません。