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文章「天使のような微笑みで」・漫画005シリーズ61話「映画デート」

 テディベア、つまりクマの縫いぐるみには、他の縫いぐるみにはない魔力がある。
 なので、近づかないに越したことはない。うっかり近づくと、やられる。心を撃ち抜かれ、虜にされる。
 私たち人類はテディベアの僕(しもべ)にされないように、気をつけて生きねばならない。以前、アゴヒゲを生やした厳ついイギリス人のオジサンが、「こいつは俺の親友さ」と自分のテディベアを片手に笑っている映像を観たことがある。怖い、怖すぎる。
 また、最近偶然、テディベアの毒牙にかかった男性をみかけた。ある日、私がスーパーで日用品を買うためにレジの前で並んでいると、20代後半と思しき男性が柔軟剤を選んでいた。数あるメーカーの柔軟剤の中から、彼は、ある柔軟剤の詰め替え用を手に取った。しばし見つめ、それから、おもむろにそれを口にくわえる。柔軟剤のパッケージに描かれた半笑いのクマは、彼が他の柔軟剤ではなく、ファー●ァ詰め替え用を選んだことを喜んでいるように、私の目には映った。
「お前は、やはり私の僕。これまでも、これからも」
 クマの口元は、自ずとほころぶ。
 かく言う私も大学生の時、玩具売り場で、とあるテディベアに一目惚れし、家に連れ帰ったことがある。それから毎晩添い寝をしていた。体長40センチほどの、ありふれた薄茶色のテディベアだったが、私にとっては特別な存在だった。
 しかし、朝、母が私を起こす際、私が起きないとクマを片手に持ち、「起きて、起きて、朝ですよー」と言いながら起こしてくるのが、厄介だった。
 ある朝、かなり眠かったので機嫌が悪く、私がテディベアを押しのけた時のこと。母は「やめて、やめて。起きないなら、もう知らない」とテディベアと化した口ぶりのまま、ベッドから離れていった。
 テディベア、恐るべし。当時40代半ばの母にのりうつるとは。
 やはり、テディベアは愛らしくも危険な存在に違いない。
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  次回のモシャブログは、文章「リカちゃんハウスに住む女」・漫画「最近のドール」の予定です。
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プロフィール

●ミネルバネオ代表 石橋武
【経歴】
1974年/立命館大学経営学部を卒業し、㈱大阪読売広告社に入社
1994年/現代文講師出口汪氏と大学受験予備校S.P.Sを立ち上げるべく、㈱大阪読売広告社を退社。㈱ミネルバ代表取締役として、大阪、後に東京で大学受験予備校S.P.Sを経営。
2002年/大阪のS.P.Sにて、出口氏が開発した教材「論理エンジン」を使用した個人のお客様向け添削業務や国語特訓塾、学校様・塾様向けの「論理エンジン」販売や指導方法のレクチャーを開始。
2007年5月/㈱水王舎代表取締役に就任し、「論理エンジン」営業のみならず、書籍の企画・販売にも携わる。
2011年2月、㈱水王舎代表代表取締役を退任。
2011年8月/ミネルバネオを設立
趣味は読書、映画鑑賞。MC中心のお笑いオヤジバンドの一員でもある。

●共同執筆者(ペンネーム:モシャ)プロフィール
甲南大学を卒業しました。
ミネルバネオで働いています。
30代半ばを過ぎてしまいました。
よく聴く音楽はプリンス、レディオヘッド、シールなどです。
親戚は人間国宝(陶芸)です。ちなみに私の父方の祖父も陶芸家でした。

・当ブログの内容について、無断掲載、転用を禁じます。

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