石橋 武の「多読乱読、言いたい放題!」094

 私が今まで読んだ本のうち、印象に残った本を紹介しています。
● 白石一文『私という運命について』
 2005年上梓。
 前作『見えないドアと鶴の空』で象徴的な3人を据え、「生きる」ということについて考察した著者は、この作品で一歩、その考えを深化させようと試みた。そのために、著者が選んだ視点は、女性性であり、時代背景だ。人としての逃れられない運命。それは、生まれることと死ぬこと。これは何人たりとも逃れることができない始点と終点だ。
 それでは、女性に焦点を当てるとどうなるか。「男の人というのは案外弱いのです。でも私たち女性はそうではないでしょう? 子を生み育て、この世界を存続させていくのは私たち女性の仕事です。私たちが家を守り、子供を生まなくなったら、この世界は瞬く間に滅んでしまいます(P.95)」。最終的に主人公の義母になる佐智子が主人公に当てた手紙の一部だ。つまり、次代の子を産む力こそ、女性性の最たるものだ、と。著者は更に「生む、生まないは別にして」という心配りも忘れない。時代背景でいえば、男女雇用機会均等法の施行後であり、携帯端末の急速な需要拡大時期である。男性優位社会にあって、女性にとって「仕事」とはどのような位置づけになるのか、主人公は否が応でも考えざるを得ない。つまり、選択の自由が、恋愛、結婚、出産という「女性性」との軋轢を生む。当然、男性も無縁ではいられない。より苛酷な状況を現出せしめる。しかし、それらに対して、著者は至極当たり前だが、なかなか自分では認めにくい現実を読者に対して突きつける。「仕事をする人の替わりはあっても、愛する人の替わりはいない」という当たり前のことを。自らの来し方を反芻しながら、主人公は自らの生きる芯を模索し作り上げていく。予期せぬ出来事にも揺るがない「自分」を。その確信を持ち、結婚、出産を主人公は経る。ラスト、産み落とした我が子と、亡き夫の化身である白馬との邂逅シーンの感動は言葉では言い表せない。
● モシャの呟き
 亡き夫の化身が白馬!!
 亡き夫は王子様みたいな人だったんでしょうね。
 ちなみに私の夫が亡くなった時、化身はおそらく「こぐま」です。
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プロフィール

●ミネルバネオ代表 石橋武
【経歴】
1974年/立命館大学経営学部を卒業し、㈱大阪読売広告社に入社
1994年/現代文講師出口汪氏と大学受験予備校S.P.Sを立ち上げるべく、㈱大阪読売広告社を退社。㈱ミネルバ代表取締役として、大阪、後に東京で大学受験予備校S.P.Sを経営。
2002年/大阪のS.P.Sにて、出口氏が開発した教材「論理エンジン」を使用した個人のお客様向け添削業務や国語特訓塾、学校様・塾様向けの「論理エンジン」販売や指導方法のレクチャーを開始。
2007年5月/㈱水王舎代表取締役に就任し、「論理エンジン」営業のみならず、書籍の企画・販売にも携わる。
2011年2月、㈱水王舎代表代表取締役を退任。
2011年8月/ミネルバネオを設立
趣味は読書、映画鑑賞。MC中心のお笑いオヤジバンドの一員でもある。

●共同執筆者(ペンネーム:モシャ)プロフィール
甲南大学を卒業しました。
ミネルバネオで働いています。
30代半ばを過ぎてしまいました。
よく聴く音楽はプリンス、レディオヘッド、シールなどです。
親戚は人間国宝(陶芸)です。ちなみに私の父方の祖父も陶芸家でした。

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