石橋 武の「多読乱読、言いたい放題!」046
私が今まで読んだ本のうち、印象に残った本を紹介しています。
● 村上春樹『1Q84 Book-1、Book-2』
2009年6月24日午後7時読了。
5月30日が初版で、私が手にしたのは6月17日の四刷だ。
さて内容だが、構成的には『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を彷彿とさせる二視点からの物語が入れ子になって進む。一つは「青豆」という名の現代の所謂仕事人。DVで傷を負った女性の駆け込み寺的な施設のオーナーの依頼で元凶を断つ裏稼業をしている。渋滞している首都高速の緊急避難はしごから降り立ったときから、『1Q84』の世界に含まれてしまう。もう一つは「天吾」という予備校講師で小説家の卵。ある新人賞の下読みをしているときに出会った『空気さなぎ』という作品。それを巡り、編集者の小松があるプロジェクトを提案する。作者である17歳のふかえり(深田絵里子)の了承を取り付け、天吾がリライトし、新人賞を取らせるというプロジェクトだ。その二つの物語が進行していくうちに、ふかえりが17歳まで育ち、逃げ出してきた「さきがけ」という組織の存在や「青豆」と「天吾」が10歳の時に出会っていたことなどが浮かび上がってくる。「青豆」はその組織のリーダーの始末を頼まれる。「天吾」はその組織からふかえりを守ろうとする。そして二人は宿命的な10歳の時の出会いを心の支えにそれぞれの道を歩む。「1984」ではなく、月が2つある「1Q84」の世界で。そして、……。
村上春樹の作品としては大変読みやすく、面白い作品だった。会話部分はまるっきり翻訳物のハードボイルド。著者は恐らくレイモンド・チャンドラーを意識したのだろうが、私はロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズを思い出した。ただ、前半、ストーリー的面白みでぐいぐい読者を引っ張っていった牽引力が、後半、いつものことだが、説明くさくなり、息切れしてしまう。勿論、著者はエンターテイメントとして書いている訳ではないと思うので、その部分の大切さは分かるのだが、残念だ。そして、キーになっている「リトル・ピープル」。これは一体何なのか? 何らかのメタファーだと思うが、分からない。分からないが面白い。これが村上ワールドなのだ。
★モシャの呟き
『めくらやなぎ』に『空気さなぎ』。
村上春樹氏は、『××××なぎ』がお好きなんでしょうか。
次回作は是非、『電気うなぎ』でお願いいたします。
● 村上春樹『1Q84 Book-1、Book-2』
2009年6月24日午後7時読了。
5月30日が初版で、私が手にしたのは6月17日の四刷だ。
さて内容だが、構成的には『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』を彷彿とさせる二視点からの物語が入れ子になって進む。一つは「青豆」という名の現代の所謂仕事人。DVで傷を負った女性の駆け込み寺的な施設のオーナーの依頼で元凶を断つ裏稼業をしている。渋滞している首都高速の緊急避難はしごから降り立ったときから、『1Q84』の世界に含まれてしまう。もう一つは「天吾」という予備校講師で小説家の卵。ある新人賞の下読みをしているときに出会った『空気さなぎ』という作品。それを巡り、編集者の小松があるプロジェクトを提案する。作者である17歳のふかえり(深田絵里子)の了承を取り付け、天吾がリライトし、新人賞を取らせるというプロジェクトだ。その二つの物語が進行していくうちに、ふかえりが17歳まで育ち、逃げ出してきた「さきがけ」という組織の存在や「青豆」と「天吾」が10歳の時に出会っていたことなどが浮かび上がってくる。「青豆」はその組織のリーダーの始末を頼まれる。「天吾」はその組織からふかえりを守ろうとする。そして二人は宿命的な10歳の時の出会いを心の支えにそれぞれの道を歩む。「1984」ではなく、月が2つある「1Q84」の世界で。そして、……。
村上春樹の作品としては大変読みやすく、面白い作品だった。会話部分はまるっきり翻訳物のハードボイルド。著者は恐らくレイモンド・チャンドラーを意識したのだろうが、私はロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズを思い出した。ただ、前半、ストーリー的面白みでぐいぐい読者を引っ張っていった牽引力が、後半、いつものことだが、説明くさくなり、息切れしてしまう。勿論、著者はエンターテイメントとして書いている訳ではないと思うので、その部分の大切さは分かるのだが、残念だ。そして、キーになっている「リトル・ピープル」。これは一体何なのか? 何らかのメタファーだと思うが、分からない。分からないが面白い。これが村上ワールドなのだ。
★モシャの呟き
『めくらやなぎ』に『空気さなぎ』。
村上春樹氏は、『××××なぎ』がお好きなんでしょうか。
次回作は是非、『電気うなぎ』でお願いいたします。